相続登記は、土地・家・マンションなどの不動産の所有者が亡くなった際に、相続人への名義変更手続きを指します。
相続登記を怠ると、不動産の所有者が不明確になり、争いが生じたり、売買が制限されるなどの不利益を被る可能性があるため、手続きが必要です。
相続登記の期限は定められていないため、罰則などが発生することはありません。
しかし、自発的に手続きを行わないと、後回しになってしまう可能性があることを留意してください。
次のセクションでは、相続登記を行わないことにより生じるリスクを詳細に説明しています。
相続登記の概要を理解するためにも、ぜひ目を通してください。
相続登記を怠ることによる4つのリスク
この節では、相続登記を放置することによる4つのリスクについて説明します。
相続登記には期限が定められていないため、「ついうっかり登記を忘れてしまう」というケースがよく見られます。
また、「相続登記を行わなければならないことは分かっているが腰が重い」と感じる方もいるかもしれません。
そうした場合には、ぜひこの節をすぐに読んでいただくことをおすすめします。
なぜなら、相続登記を先延ばしにすることによってどのような問題が生じるのかを簡潔にまとめているからです。
ご自身やご親族のためにも、是非この節の内容を把握しておいてください。
リスク①遺産分割協議が複雑になるリスク
遺産分割協議とは、亡くなった方の遺産を相続人全員でどのように分けるかを協議することです。
遺産分割協議は時間が経つにつれて困難になる可能性があります。その理由は、時間の経過と共に新たな相続が発生し、相続人が増え、人間関係が複雑になるからです。
例えば、父、母、長男、次男の4人家族の場合を考えてみます。長男と次男はそれぞれ妻と子3人を抱えています。父が亡くなった場合、母、長男、次男の3人が相続人となります。しかし、相続登記を行わずに次男が先に亡くなった場合、次男の妻と子3人も相続人となり、相続登記は母、長男、次男の妻、子3人の計6名で行う必要が出てきます。
遺産分割協議は相続人全員で行う必要があり、協議書にも全員の捺印が必要です。相続人が亡くなることや、親族が増えることで親族同士の関係性が薄れていくと、全員が集まって協議することが難しくなります。それによって協議が進まなくなる可能性が高まります。
このように、相続登記を放置することによって遺産分割協議は困難になる可能性が高いことを理解しておくことが重要です。
リスク②相続不動産を差し終えさえらるリスク
相続分割協議で不動産の取得が決定されていても、相続登記を行わない場合、他人によって不動産が差し押さえられる可能性があり、結果的に不動産の所有権を獲得できなくなる可能性があります。
共同相続人の中に借金を抱えている者がいる場合、その個人の債権者によって不動産が差し押さえられることが考えられるからです。
例を挙げると、3人の相続人がいる場合に、1人が借金を抱えているとしましょう。
この借金の債権者は、借金を抱えている相続者の法定相続分を相続登記し、差押登記を行うことができます。
その結果、借金を抱えている相続者が不動産を取得しなくても、差押登記は取り消されることはありません。
このため、借金を抱えていない他の相続人の資産まで差し押さえられる可能性があるということです。
法定相続分を超える相続財産の取得は、相続登記を行わなければ、債権者などの第三者に対抗する手段が制限されているとされています。
もしも差押登記されてしまった場合の対処法として、借金を抱えている相続人が「相続放棄」を行うことで、債権者による相続登記や差押登記を無効化することができます。
ただし、相続放棄は相続の開始が発生したことを知ってから3ヶ月以内に行う必要があります。
このような事態を避けるためにも、相続した不動産の所有権を確保するために相続登記は必須と言えます。
リスク③不動産を売却できなくなるリスク
相続登記をしないまま家や土地を売却しようとすると、不動産会社から「相続登記が済んでいないのですぐには売れない」と指摘を受けるケースがあります。
不動産の売却には、相続人への名義変更が完了している必要があるからです。
一般的には不動産の売却と相続登記の準備を並行して行っていくことになります。
ただし、被相続人が亡くなってから時間が経過していると相続登記に想像以上に時間がかかってしまうリスクは考慮しておくべきです。
相続登記の有無が売却への足かせとなり、土地の資産評価額が時間の経過とともに落ち込んでしまう可能性があります。
リスク④相続登記の必要書類の収集が難しくなるリスク
相続登記を行う際には、関係者の戸籍謄本や住民票の除票など公的書類が必要となります。
しかし、相続登記を先延ばしにすると、必要な書類を用意することが難しくなる場合があります。
公的書類には保管期限が定められているためです。
たとえば、死亡者の住民票の除票は通常5年間保存されますが、期限を過ぎると書類が廃棄される可能性があります。
迅速に手続きを進めれば、必要な書類をスムーズに取得できるかもしれませんが、手続きを遅らせることで余計な手間や書類の取得が難しくなるリスクがあるのです。
このような状況では、かかる費用や時間が増える可能性が高いため、相続登記が必要なのにまだ行われていない場合は、速やかに手続きを始めることが重要です。
相続登記を進めるために
それではここからは相続登記の進め方について解説します。
相続登記は具体的に4つのステップに沿って進むが多いので今回は4ステップを解説します。
ステップ①相続する不動産を確認する
不動産の所有地域を管轄する法務局で登記を行います。相続する不動産の状態や権利関係を確認するために、登記事項証明書(登記簿謄本)を入手します。もちろん、司法書士に依頼して手続きを進めることも可能ですが、自分で基本的な流れを理解しておくことで、円滑な進行が期待できます。
ステップ②遺言または遺産分割協議で引き継ぐ人を決める
亡くなった方が遺言書を残している場合は、その内容に従って不動産を引き継ぐ相続人を確定します。
遺言書が存在しない場合は、相続人全員が遺産分割協議を行い、誰が不動産を受け継ぐかを話し合います。相続人全員が協議内容に合意したら、遺産分割協議書を作成し、全員の署名と捺印を行います。
ステップ③相続登記に必要な書類を収集・作成する
相続登記には、亡くなった方の戸籍関係の書類や相続人に関する書類、対象となる不動産の固定資産評価証明書などが必要です。
登記申請書は法務局のホームページで様式をダウンロードでき、必要事項を記入して作成します。
また、法定相続情報証明制度を利用して相続情報一覧図の写しを入手することで、相続関係を把握するのに役立ちます。必要な書類を収集し、相続登記の準備を進めます。
ステップ④管轄の法務局へ申請する
相続した不動産の住所地を管轄する法務局に登記申請書と添付書類を提出します。登記申請には登録免許税の納付が必要です。
申請書に貼り付けるために、別の窓口で収入印紙を購入する必要があります。
法務局で審査と登記が行われ、通常は1週間~10日程度で登記が完了します。登記が完了したら登記識別情報の通知や登記完了証を受け取り、大切に保管します。
最後に
いかがでしたでしょうか?ここでは相続登記について解説しました。
相続登記はここで書いたように放置をすると大きなリスクを伴います。
そのため相続が発生した際にはなるべく早く司法書士へご相談いただくことをおすすめします。
また相続が発生した際には相続登記だけではなく、銀行の預貯金の解約なども必要になるケースが多いので、相続手続き全般についてポイントを知りたいという方は是非下記の記事もご覧ください。
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